INTERVIEW 03
経理特化型AIで実現するバックオフィス業務改革
企業価値を上げる戦略経理の実現
エースタートの印象、思い出
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森IPOの前後よりも、VCさんに投資頂いた前後の方が変化が大きかったですね。事業って資金繰りと人繰りの戦いなんですよね。資金繰りに関しては、昔は銀行から借りるか、いかに市場から直接資金を入れるかだったと思うんですよ。
森ですが、今の時代においては、いかに良いVCさんとお付き合いするかが大事だと思います。どこから資金を入れるのか、というのは、ものすごく経営判断で重要ですし、資金だけ見ていると大失敗しますね。
私たちの株主報告会は月に一回あったのですが、一度も場が荒れたことが無くて、すごく良いVCさんに集まっていただいたなあと、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。コロナ禍で苦しい時もあったのですが、一度も罵倒されたこともありませんし、皆さんに支えられてきたので、シリーズAのVCさん選びは重要だったなと思います。 -
渡邊私たちが初めて出資を決めさせていただいた時の森さんの言葉が本当に印象的でしたね。「今日からファーストアカウンティングは私の会社ではなくなりました、皆さんの会社です」ということをおっしゃったんですね。ここまでずっとその言葉通りに実行されてきたので、本当にすごい事だと思います。
ご縁を頂けて、本当に良かったです。ちょうどそういう話の流れになりましたので、エースタートの印象や思い出をお聞かせいただけますか? -
森良い時も悪い時も、終始起業家の立場に立ってアドバイスをくださったのが、非常に印象的です。渡邊さんのバックグラウンドでHRの強みもありますので、人繰りのところでたくさんアドバイスいただきました。どうしたら従業員が幸せになるかという部分で、すごく適切なアドバイスをたくさん頂けて、非常に良かったなと思いますし、感謝の気持ちでいっぱいです。 お金の調達は一瞬ですけど、VCさんとの関係性はずっと続きますから。なので、これから資金調達をしようとしているベンチャーの経営者は、出資を受け入れる前にいろいろとVCさんについて裏取りをするとよろしいと思います。御社はすごく良心的な ので、御社のようなVCさんが増えたらいいなと思います。
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渡邊ありがとうございます。私も本当に色々な思い出がありまして、中でも合宿に参加させて頂いた事が、すごく思い出深いですね。
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森あれ、すっごく良かったです!従業員のことを考えるとIPOという選択肢がベストなんです。その意義について、2回の上場経験を持つ渡邊さんから講話していただくというのは、従業員の雰囲気も良くなるのですごくいいと思います。従業員もVCさんと会う機会がないので、なぜ投資してくださったのかとか、上場後はこういう世界になりますよという事を、経験を踏まえて説明してくださったのは、すごく響きましたね。
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渡邊全社員の方にお会いする機会はなかなかないですが、本当に印象的でしたね。食い入るように話を聞いてくださって、みんな目がキラキラしていましたよね。 上場に向けて本当に一丸となって、関心が非常に高いと言いますか。むしろ、私が刺激を頂いて、そういう会社づくりっていうのは見習わないといけないなと思いました。
森さんの周りにいる人はすごく優秀な人ばかりで、よくこんな人を集められたなって思うんですが、その採用を諦めない原動力はどこから来るんですか? -
森もう、絶対に諦めないです、出来るまでやる。役員メンバーは、自分より優秀な人を集めないと、小さい会社は終わってしまうんですよね。自分が一番優秀だと、やり易いとは思うんですよ。 全部を自分で決められるので。世界を変えようと思ったら、自分より優秀な人を集めないと自分の器で終わってしまうので。 そこはもう、これからもやり続けようと思っています。
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渡邊素晴らしい人たちが、また次々に人を集めていたのもいい思い出ですね。
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森良い人を集めると、良い人が来るんですよね。最初の人集めってすごく重要で、うちは恵まれていましたね。元々優秀なのに加えて、自身でレベルアップしていくので、パーソナリティにも非常に恵まれたなって思いますね。よく、社長は問題を抱えて孤独だといいますが、一人で経営をしないのが重要だと思います。課題が出たらちゃんと共有して、ひとりで抱え込まなければ、そんなに辛いことも無いんじゃないかと思います。
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渡邊それはすごく感じますね。報告会でも本当に全てオープンですよね。今、何考えているとか、 本当に 困っているとか、だから皆さん助けてねとか。
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森やっている事は、適時開示ですよね。都合の悪い事も全部出すというスタイルでやっています。抱え込むとか、あるいは一度嘘をつくと、その後も嘘に嘘を重ねる事になって良い事ないんですよ。
なので、投資を受ける時は、そこってすごく重要です。投資を受けた瞬間に、そこには株主さんがいるということなので、my companyからour companyに変えられない人は、VCさんから投資を受けたらダメだと思います。VCさんとお付き合いしたいという人がいるのであれば、そこの発想は絶対に変えないと上手くいかないですし、いずれ苦しいことになります。自分の会社だと思っているのに、実態は自分の会社じゃないので、ギャップがあるからハレーションが起こるんですよ。 -
渡邊非常に大事なことですね。
今後のビジョン
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渡邊最後になりますが、今後のビジョンやどんな展開を考えているかをお聞かせください。
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森そうですね。今、生成AIに着手していまして、経理の方にしかできない判断業務、仕訳ですとか、照合作業に関するものの意思決定を生成AIを使って自動化したいと思っています。それと、海外展開を行っているSaaSは少ないので、本気でグローバル化をしようとしています。エンジニアに外国籍のメンバーを入れて、英語の請求書や領収書が読めるようになってきますし、ユーザーインターフェースも英語化してリリースしたいなと思っています。
ただ、やるときには必ず、地球環境に良い意思決定したいと思っています。事業を伸ばしつつ環境に良い、というのは当たり前だと思うんです。人としてもそうですし、企業としても、そうしないと地球に住めなくなります。これは本気でやってくことが必要ですので、注力してゆきたいと考えています。 -
渡邊非常に楽しみですね。環境に貢献するといった判断軸を持ちながら、グローバル展開される、そういったコンセプトをお持ちなんですね。事業の将来性はもちろんのこと、森さんのそういった哲学や理念がますます会社を大きく成長させていくんでしょうね。
VCとして上場後に予定していた株式の売却は終わっておりますが、実は、エースタートの持ち株の一部は、中長期的に保有していきたいと思ってるんですよ。御社の価値は、これからどんどん大きくなると信じていますので。 -
森そんな風に言っていただくと嬉しいですね。ありがとうございます。
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渡邊未上場の時とは、お付き合いの仕方は変わりますけど、末永く応援させていただきたいなと思っていますのでどうぞよろしくお願いします。本日は、本当にありがとうございました。
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森ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
- インタビュー実施日:2023年10月
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GUEST
ファーストアカウンティング株式会社
代表取締役社長 森 啓太郎
1974年生、ソフトバンク株式会社を経て、アカマイ・テクノロジーズ日本法人立ち上げに参画。営業本部長に就任し、2008年度営業成績は世界No.1などの実績を残しました。AIを使うことで会計書類の自動データ化と自動仕訳が可能となれば、人手不足の解消に貢献できると共に、重要業務にリソースを割くことができると考え、2016年6月にファーストアカウンティングを設立しました。現在、AIを活用した経理業務改革を推進中。
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INTERVIEWER
株式会社エースタート
代表取締役CEO 渡邊 一正
京都大学卒業後、リクルートグループに入社し、主に人材紹介部門(現リクルート)でキャリアを積みながら、独学でベンチャーのIPO支援等を行う。 退職後、ネクストジャパンに経営参画し、CFOとして2004年に株式公開を実現。上場後、代表取締役社長に就任。2007年に退任し、ベンチャーへのコンサルティングや投資を行う。 2010年、ライドオンエクスプレスのCFOに就任。2013年に自身二度目の株式公開を経て、その後東証一部(現東証プライム市場)へ上場。 2015年、エースタートを設立、代表取締役 CEOに就任。同年より、Tech系ベンチャーファンドの運用を開始。2019年には、日本初の「宇宙ベンチャー特化型投資ファンド」をローンチ。起業家、上場企業社長、2度のIPOを牽引したCFO、投資家など、多彩な経験を併せ持つ事業家。