INTERVIEW 04
軌道上サービス経済圏を確立し安全で持続可能な
宇宙開発の実現へ
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代表取締役社長兼CEO
岡田 光信
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代表取締役CEO
渡邊 一正
STORY
アストロスケールホールディングスは、2013年に設立され、安全で持続可能な宇宙環境を目指し、スペースデブリ(宇宙ごみ)の除去を含む軌道上サービスを提供する。コア技術である「宇宙空間の非協力物体に対するRPO技術」を用いて、運用終了後の人工衛星のデブリ化防止のための除去サービス、既存のデブリ除去サービスだけでなく、軌道変更・軌道維持・燃料補給による衛星の寿命延長サービス、故障機や物体の観測・点検サービスに取り組む。2024年6月5日に東証グロース市場へ新規上場した。
プロローグ、アストロスケール
創業時の想い
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渡邊この度は上場おめでとうございます。今日は色々とお話をお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いします。
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岡田よろしくお願いします。
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渡邊まず、起業のきっかけや創業の想いをお聞かせいただけますか。宇宙ごみの問題に世界で1人立ち上がられたわけですが。
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岡田神戸生まれ神戸育ちで、やっぱりあの阪神大震災が大きなきっかけですね。1995年1月、大学4年の冬だったんですけど。もともと東大農学部で遺伝学を学んでいて、大学院も行くことになっていました。
阪神大震災の影響でアカデミアの世界に居続けられなくなったことをきっかけに、何か社会に大きなインパクトがあることがしたいと考えました。そのひとつが財務省に入ったことですし、その後に留学して起業したいと思いまして、ソフトウェアの会社を起業もしました。それでも、インパクトの大きさが全然足りていなかったんですよね。
それで40歳手前でやっぱり悩みまして。悩む時ってもがけばもがくほど自信をなくします。そんな時に、「宇宙ごみ」問題によって宇宙は持続利用が不可能であること、また誰も解決策を持っていないと知ったとき、私の深い悩みの時期が終わりを迎えました。
たびたび「よくやろうと思いましたね」とか「なぜですか?」と言われますが、これを誰かが解かなきゃいけないという震える課題に出会えたことは喜びでしかなかったです。 -
渡邊岡田さんは起業して3日後くらいにアメリカに行かれてますよね。SpaceXまで訪問されて。そうと決めたら、すごいスピード感ですよね。
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岡田でも、起業した日って、嬉しいですよね?
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渡邊嬉しいですよね。アストロスケールは5月4日に起業されていましたよね。
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岡田起業日にたくさんメールを送りますよね。その時は、メールを送る先が3人しかいませんでした。宇宙業界のコネクションがなさすぎて、送る人がいないという…(笑)。
IPOまでの道のりで苦労したこと
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渡邊そうやってアストロスケールを起業されて今に至るまで、まずは個人として、どんなところに一番ご苦労されてきましたか。
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岡田個人としては、常に正気で居ることが大事でした。やっぱり考えてしまいますからね。大きなミッションの中に膨大な課題があるので、ちょっと正気を失うと、いろんなことが止まります。大きな課題をブレイクダウンして一個ずつ解いていくのですが、膨大であることや課題の難しさに弱気になりかねません。また、大きな問題が勃発することもありますが、そういった長い道のりを淡々とやっていくためにも正気でいることが大切です。
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渡邊岡田さんはずっと前向きでしたもんね。これはね、本当にすごかった。さすがに落ち込んでるかな?と思って電話しても、明るいんですよね。ちなみに、正気で居続けるためのコツというか、どういう風に維持できていましたか?
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岡田正気で居るコツは、やっぱりハッピーでコンフィデントで居続けることですね。それにはコツがあって。自分が考えることと、言うことと、行動することを全部一緒にすることです。
そこにギャップがあると、絶対に自分に跳ね返ってくるので。自分が嘘をついてたり、誤魔化していることがあると、後でその問題が解けていないので止まってしまうんですよ。
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渡邊思考と言動がぶれてないということですよね。
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岡田これはマハトマ・ガンジーが言っていたことでもあります。
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渡邊でも僕も実は、それに何度も救われてますからね。アストロスケールの件で、へこみそうになる時ありましたからね(笑)。
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岡田ありますよね(笑)。
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渡邊岡田さんと喋ると、安心するというかホッとするというか、明るく維持できるというか。もちろん僕も見せていないつもりだけど、やっぱり人間なので。本当に救われますね。
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岡田ボスが不安になったり自信をなくすと、あるいはビジョンがブレると、社員に伝わりますからね。
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渡邊確かに本当にそれですね。僕も何度も救われたんですよ。岡田さんは一言でいうと、本当に安心感のある人なんですよ。
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岡田よかったです。
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渡邊それがあるからこそ、ずっと乗り越えてこられたんですね。
では次に、アストロスケール、企業としての一番の苦労は何でしょうか? -
岡田アストロスケールの命題は二つしかなくて、一つは宇宙の持続利用の実現に、どうやって技術を作るのか、事業を作るのか、どうやって世界のルールを作るのか。これまでは誰もできていなかったわけです。これを解くのが一つ。もう一つは、会社が黒字化するまで誰からどうやってファンディングをしていくのかという。この二つを解かなきゃいけない。
おかげさまで、大きく変わりました。技術の進展も素晴らしく、先週も国連でスピーチしたんですけど、非常に大きな拍手をいただきました。 -
渡邊さらっとおっしゃってますけど、すごいことをされてますけどね。先週もちょっと国連で!みたいな(笑)。国連をはじめ、世界の重要な舞台で何度もスピーチされていますものね。
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岡田事業面でもちゃんとパイプラインが積みあがってきていて。ほんの2年前くらいまで何もなかったのに。ルール作りも本当に大きく変わっていて、これからも大きく変わり続けると思います。
これまでずっと蓄積してきたものが、やっとうまく芽生え始めたのかなという感じですよね。
ファンディングについては、今回上場で公募したわけですけども、これまでは私募で行ってきたわけですが、それこそエースタートさんにすごく助けていただきました。その私募は全部、シリーズAからシリーズGまでどれも思い出深いんです。